2006年3月22日

虚空の眼

最近またフィリップ・K・ディックの『虚空の眼』を読み返している。数あるディックの作品の中でこの作品が俺は一番面白いと思う。

陽子ビーム偏向装置の見学に行っていた8人が、その装置の事故により現実の世界ではなくそれぞれの内宇宙世界に取り込まれてしまう物語。それぞれの世界ってのが相当狂っていて、神が身近に存在していて悪口を言うと呪われたりするんだけどその描写が相当狂っていて非常に面白い。潔癖性のおばさんの世界とかも怖い。

ディックのすごいところは、物語上の現実と虚構がクルクル入れ替わるところだな。読んで行くとこちらもどんどん混乱してものすごい困惑させられる。多分本人も分かってないんだろうな。

ディック作品はSFというくくりで語られる事が多いし確かに出て来るガジェットはそうなんだけど、全体をして流れているのは陰鬱なドラッグ中毒者の苦悩なんだよな。分かってるし、苦しいんだけど逃れられない恐怖。それがディックの本質な気がする。これって実はだれしも持っている要素で(ドラッグ中毒という意味でなく)、だからこそ時代を超えて愛されるのかもしれない。
神学とか出て来るし、意味が分からない部分も多々あれどディック作品は大好きだな。ただ『ヴァリス』と『聖なる侵入』は全く訳が分からないのでおすすめできない。