2006年12月19日

スキャナー・ダークリー

今日は時間が空いたので、渋谷まで『スキャナー・ダークリー』を観にいった。

『スキャナー・ダークリー』は言わずと知れたフィリップ・K・ディックの名作『暗闇のスキャナー』が原作の映画だ。監督は『スクールオブロック』のリチャード・リンクレーター。使用されている手法はロトスコーピングと言って、実写で1度撮影された映像を、一コマ一コマもう一度アニメーションに置き換えるという、えらい手間のかかるものを使用している。リンクレーターは過去に『ウエイキング・ライフ』という作品で同じ手法を使っているが、今回の『スキャナー・ダークリー』は格段に進歩している。

ストーリーは以下(goo映画より)。

「物質D」と呼ばれる幻覚剤など、ドラッグが蔓延している今から7年後のアメリカ。覆面捜査官のボブ・アークターは「フレッド」というコードネームで、「物質D」の供給源を探るおとり捜査を行なっていた。普段は「スクランブル・スーツ」に身を包んでいるため、同僚すら彼の正体は知らない。ボブは捜査と監視のためにジャンキーのバリス、ラックマンと共同生活を営み、さらには売人のドナと恋人関係にまでなっていたのだが……。

俺はディックが大好きなんだけど、ディック原作の映画で成功したものって『ブレードランナー』(大人の事情によりDVDが絶賛絶版中)くらいしかないように思う。(まあこれも原作と全然違う話になってるんだけど。)原作自体が単なるドラッグ漬けのヨイヨイ物語ってのが多いから、映画にしにくいのかもしれない。

しかし『スキャナー・ダークリー』は成功していると思った。と言うか、原作に結構忠実。ジャンキー同士の被害妄想、誇大妄想、疑心暗鬼に満ちたコミュニケーションとかそのままグダグダに描いてる。つまり、映画としてはつまらない。相当観る人を選ぶ映画だ。恐らく原作読んでたり、ディックを知らないと全然楽しめないんじゃないか。

ディックは小説の中でしばしば、「現実と虚構の境界線」といったテーマを扱う。と言うか毎回か。しかもそれが、話の中でコロコロ入れ替わる。読者はどれが現実でどれが虚構であるのか、混乱させられ、結局何も分からないまま物語は終わったりする。あまりはっきりと答えは出さないんだよね。
しかも主人公が酷いことになる物語が多い。酷いことにならないまでも、幸せにはなれない。俺好み。

映画版『スキャナー・ダークリー』もディックのそういった所をよく分かっていて、ラストはかなりせつない。

頻繁に出てくるスクランブルスーツ(麻薬捜査官の身分を隠すために着るスーツで、150万人の見た目データが登録してあり、そのデータが常に入れ替わっているスーツ。つまり色んな顔とか身体につねに変化して動いているスーツ)も原作のイメージどおりでよい。
久々のウイノナ・ライダーも良かった。万引き事件以来、久々の登場じゃないか。好き。

この映画、俺はかなり楽しめたけど、なかなか人を選ぶ映画だろうな。