押見修造作、『漂流ネットカフェ』を読んだ。押見修造先生の作品を初めて読んだのは『デビルエクスタシー』で、とても面白いと思ってその後の「ユウタイノヴァ」も楽しく読んでいたのだけど、見事なほどの打ち切りであった...。
『漂流ネットカフェ』の主人公はしがないサラリーマン。初恋の女の子との思い出をずっと引きずりながら、結婚をして奥さんは妊娠中。マタニティブルーからか奥さんとは今一うまく行っていない主人公。ふと立ち寄ったネットカフェで初恋の女の子と再開。そしてネットカフェごと異世界へ飛ばされてしまう...。主人公たちは無事帰還できるのか、といった物語。
設定としては楳図かずお先生の『漂流教室』なのは間違い無いと思うけど、決定的な違いは世界をかなり限定している所。基本的にネットカフェの外の世界はほとんど描かれず、ずっとネットカフェで起こる陰惨な出来事を追っている。結果的にその限定が、物語の緊張感を生み、尚且つ、構成の甘さを補って、とても面白い物語にまで昇華させている。
もちろん漂流しているのが大人なので、エロ描写、暴力描写もふんだんにあって、でも意味がないものでもなくて、緊張感を出す助けになっている。物語も結構よくできていて、何故ネットカフェごと異世界へ飛ばされてしまったのか、という謎も結構うまいこと説明される。ちょっとベタでもう一捻りあって欲しいのだけど。
基本的には初恋の人を想う、その思念が巻き起こす妄想の物語だ。人間って結局のところ思い出、特に恋愛の思い出に縛られやすい。でもどれだけ悔恨の念を持っても、過去は絶対に変わらない訳で、だからこそ常に思い出し、懐かしいと思ったり、辛いと思ったり美化したりする。
誰しもが持っているその気持ちを補完できるのは、漫画、映画、音楽、芸術等の文化ではないだろうか。自分をそれに投影して、ある意味勝手に解釈し、補完する。自分勝手な行為だけど、それしか方法がないような気がする。少なくとも自分は色々なものとの折り合いを付けるために、それらを見ている気がする。
押見修造は良い漫画家だと思う。絵は大してうまくないが、アイデアと漫画としての構成が上手。設定は甘いし、途中で物語がどんどんいい加減になる「永井豪シンドローム」は感じるけど、それを補う妙な魅力がある。女の子はとても可愛らしいし。
そしてふと思ったのだけど、押見修造ってサガノヘルマーと少し似ている気がした。あの骨が全く入っていなそうな、デッサンができていないキャラクターとか、物語の感覚が似ている気がする。『ブラックブレイン』がもう一度読みたいと思ったら、絶版になっているのね。